NK細胞療法と樹状細胞療法の違い|免疫での役割と併用を考えるポイント
NK細胞療法と樹状細胞療法は、どちらも免疫の働きを利用する治療ですが、同じ仕組みではありません。
NK細胞は、異常のある細胞を認識して直接攻撃する働きを持つ一方、樹状細胞は異常な細胞から得た情報をT細胞などに伝え、獲得免疫の反応につなげる役割を担います。
そのため、「どちらが優れているか」という比較ではなく、それぞれが免疫反応のどの段階を担っているのかを理解することが大切です。併用についても、単純に治療を増やせばよいわけではなく、病状や治療目的、現在受けている治療などを踏まえて検討する必要があります。
この記事でわかること
- NK細胞と樹状細胞が担う役割の違い
- NK細胞療法と樹状細胞療法の考え方
- 2つの治療を併用する背景
- 治療を検討するときに確認したいポイント
目次
NK細胞と樹状細胞は役割が異なる
NK細胞と樹状細胞は、どちらも免疫に関わる重要な細胞ですが、免疫反応の中で担う役割は異なります。
NK細胞(Natural Killer cell)は自然免疫を構成する細胞の一つです。体内を監視しながら、ウイルスに感染した細胞や腫瘍化した細胞などの異常を認識すると、標的となる細胞を攻撃します。
一方、樹状細胞(Dendritic cell:DC)は、抗原と呼ばれる異物や異常細胞の特徴を取り込み、その情報をT細胞へ伝える代表的な「抗原提示細胞」です。
簡単に整理すると、
- NK細胞:異常な細胞を見つけて攻撃する
- 樹状細胞:異常な細胞の情報を免疫系へ伝える
という役割の違いがあります。
ただし、実際の免疫反応はそれぞれの細胞が単独で行うものではありません。NK細胞、樹状細胞、T細胞など複数の免疫細胞が情報をやり取りしながら働いています。
NK細胞療法は直接攻撃する働きを利用する
NK細胞療法では、NK細胞が持つ細胞傷害作用を治療に利用します。
NK細胞は、細胞表面に現れるさまざまなシグナルを確認しながら、攻撃する必要がある細胞かどうかを判断しています。標的を認識すると、パーフォリンやグランザイムと呼ばれる物質などを介して細胞死を誘導します。
NK細胞を利用した免疫細胞療法では、血液から採取した細胞を体外で培養・活性化し、再び体内へ投与する方法などがあります。
ただし、NK細胞にはこのような機能があるからといって、NK細胞を増やしたり投与したりすれば、すべての病気やがんに対して一定の効果が得られるわけではありません。
がん細胞の性質や腫瘍周囲の免疫環境によっては、NK細胞の働きが抑えられることもあります。そのため、治療として考える場合は病状やほかの治療との関係も含めて判断する必要があります。
樹状細胞療法は免疫へ情報を伝える働きを利用する
樹状細胞療法では、樹状細胞が持つ「抗原をT細胞へ提示する働き」を利用します。
樹状細胞は体内で異物や異常な細胞に由来する抗原を取り込み、その情報を処理してT細胞へ伝えます。情報を受け取ったT細胞が活性化することで、特定の標的に対する獲得免疫の反応につながります。
そのため樹状細胞療法は、樹状細胞そのものが主役となって次々に異常細胞を攻撃する治療というより、「何を標的として認識するのか」という情報を免疫系へ伝える仕組みを利用する治療として理解するとよいでしょう。
なお、樹状細胞には複数の種類があり、治療方法についても、用いる細胞や抗原の扱いなどによって内容が異なります。「樹状細胞療法」という名称だけで、すべての治療内容や期待できる反応が同じというわけではありません。
NK細胞療法と樹状細胞療法はどう違う?
2つの治療の違いを考えるときは、「免疫反応のどこを担う細胞なのか」に注目すると理解しやすくなります。
NK細胞療法は、NK細胞がもともと持っている「異常な細胞を認識して攻撃する働き」を利用する考え方です。
これに対して樹状細胞療法は、樹状細胞が抗原を提示し、その情報をT細胞へ伝えることで、獲得免疫の反応につなげる働きを利用します。
つまり、
- NK細胞療法は「攻撃する細胞」の働きを利用する
- 樹状細胞療法は「標的の情報を伝える細胞」の働きを利用する
という違いがあります。
ただし、自然免疫と獲得免疫は完全に別々に働いているわけではありません。樹状細胞は自然免疫と獲得免疫をつなぐ重要な役割を持ち、NK細胞ともさまざまな相互作用があることが知られています。
2つの治療を併用する考え方
NK細胞と樹状細胞には異なる役割があるため、それぞれの特徴を組み合わせるという考え方があります。
体内では、NK細胞と樹状細胞は互いに影響を与えています。
たとえば、一部の樹状細胞とNK細胞の間では、サイトカインなどを介した情報交換が行われます。また、NK細胞が樹状細胞の働きに影響し、樹状細胞がNK細胞の活性化に関与することも知られています。
このような相互作用は「NK細胞―樹状細胞軸」として研究されており、自然免疫と獲得免疫をつなぐ仕組みの一つとして注目されています。
治療として併用を考える場合も、
- NK細胞による直接的な細胞傷害
- 樹状細胞による抗原提示
- T細胞などを含む獲得免疫への情報伝達
といった異なる免疫反応に着目することになります。
つまり、NK細胞療法と樹状細胞療法の併用は、同じ働きを持つ治療を単純に重ねるというより、異なる役割を持つ免疫細胞を利用するという考え方です。
併用すれば効果が高くなるとは限らない
NK細胞と樹状細胞の間に相互作用があることと、治療として両者を併用すれば必ず単独治療より高い効果が得られることは、分けて考える必要があります。
NK細胞と樹状細胞の相互作用には免疫学的な根拠があり、がん免疫の研究でも検討が続けられています。
一方、樹状細胞を利用した治療とほかの免疫療法との組み合わせについては、どのような患者様を対象とするのか、どのタイミングで治療するのか、どのように治療反応を評価するのかなど、臨床上さらに検討すべき点があります。
したがって、
「2つの治療を併用したほうが強い」
「併用すれば必ず効果が上がる」
と単純に考えることはできません。
治療を増やすこと自体を目的にするのではなく、その患者様にとって併用を検討する医学的な理由があるのかを確認することが重要です。
治療は病状や目的に合わせて検討する
NK細胞療法、樹状細胞療法、または両者の併用のどれを検討するかは、治療名だけでは判断できません。
医師は、たとえば次のような情報を確認しながら治療方針を考えます。
- 現在の病気や全身状態
- これまでに受けてきた治療
- 現在受けている治療
- 今後予定されている治療
- 免疫細胞療法を検討する目的
特にがん治療では、手術、薬物療法、放射線治療など、疾患や病期に応じた標準的な治療があります。
免疫細胞療法を検討する場合にも、それらの治療との関係を整理することが大切です。標準治療が必要な状況で、自己判断によって治療を中断したり変更したりすることは避け、現在治療を受けている主治医とも相談しながら検討しましょう。
免疫細胞療法について、あわせて確認したい記事
NK細胞療法と樹状細胞療法の違いを整理したあとは、それぞれの治療の仕組みや、免疫細胞療法全体の位置づけもあわせて確認すると、治療の考え方をより理解しやすくなります。
NK細胞療法の仕組みとは?NK細胞の役割と治療上の位置づけを解説
樹状細胞療法とは?免疫に情報を伝える仕組みを解説
免疫細胞療法とは?免疫療法との違いと知っておきたい注意点
まとめ
NK細胞療法と樹状細胞療法は、どちらも免疫細胞を利用する治療ですが、免疫の中で担う役割が異なります。
NK細胞は、異常な細胞を認識して直接攻撃する働きを持つ細胞です。
一方、樹状細胞は抗原の情報をT細胞などへ伝え、獲得免疫の反応につなげる重要な役割を担っています。
両者は体内でも互いに影響を与えているため、異なる免疫反応に働きかけるという観点から併用が検討されることがあります。しかし、併用すれば一律に治療効果が高くなると判断することはできません。
大切なのは、「NK細胞療法と樹状細胞療法のどちらがよいか」だけで考えるのではなく、現在の病状や治療目的、ほかの治療との関係を含めて治療方針を検討することです。
N2クリニック銀座本院の免疫細胞療法
N2クリニック銀座本院では、患者様の状態や治療目的を確認したうえで、免疫細胞療法の適応を医師が検討しています。
NK細胞療法や樹状細胞療法は、それぞれ免疫の中で担う役割が異なります。そのため、どちらか一方を選ぶのか、併用を検討するのかについても、治療名だけで判断するのではなく、現在の病状やこれまでの治療内容、全身状態などを踏まえて考えることが大切です。
N2クリニック銀座本院では、治療内容だけでなく、期待できることや治療上の注意点についても説明したうえで、一人ひとりに合わせて治療方針を検討しています。
免疫細胞療法について詳しく知りたい方や、ご自身の場合にどのような選択肢が考えられるか確認したい方は、まずは医師にご相談ください。
監修クリニック情報
N2クリニック銀座本院
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最寄駅:各線銀座駅B5番出口より徒歩4分
記事監修
竹島 昌栄(N2クリニック銀座本院 院長)
参考文献
- Shimasaki N, Jain A, Campana D. NK cells for cancer immunotherapy. Nature Reviews Drug Discovery. 2020;19:200-218.
- Heras-Murillo I, Adán-Barrientos I, Galán M, et al. Dendritic cells as orchestrators of anticancer immunity and immunotherapy. Nature Reviews Clinical Oncology. 2024;21:257-277.
- Peterson EE, Barry KC. The Natural Killer-Dendritic Cell Immune Axis in Anti-Cancer Immunity and Immunotherapy. Frontiers in Immunology. 2021;11:621254.
