NK細胞療法はどのような仕組み?体内での役割から治療の考え方まで
NK細胞療法を理解するうえで大切なのは、「NK細胞にはどのような役割があり、その性質を治療にどう利用しているのか」を分けて考えることです。
NK細胞は、ウイルス感染細胞や腫瘍化した細胞などの異常を察知し、攻撃する働きを持つ免疫細胞です。一方、NK細胞を利用した治療については現在もさまざまな研究が進められており、病気の種類や治療目的によって位置づけは異なります。標準治療の代わりになると一律に考えるものではありません。
この記事では、NK細胞そのものの役割から、NK細胞療法の基本的な仕組み、治療を検討するときに知っておきたい考え方まで整理します。
この記事でわかること
- NK細胞が体内で担っている役割
- NK細胞が異常な細胞を認識・攻撃する仕組み
- NK細胞療法で採取した細胞を投与するまでの考え方
- NK細胞療法と標準治療の位置づけ
目次
NK細胞とはどのような免疫細胞?
NK細胞(Natural Killer cell:ナチュラルキラー細胞)は、私たちが生まれながらに備えている「自然免疫」を担うリンパ球の一種です。
免疫には大きく、素早く反応する自然免疫と、特定の異物を記憶して反応する獲得免疫があります。NK細胞は前者に含まれます。
T細胞などが特定の抗原を認識して反応するのに対し、NK細胞は事前に特定の抗原を学習していなくても、細胞表面に現れるさまざまなシグナルを手がかりに異常を察知できます。ウイルスに感染した細胞や腫瘍化した細胞などへの免疫監視を担うことが知られています。
また、NK細胞は標的となる細胞を直接攻撃するだけでなく、IFN-γ(インターフェロン・ガンマ)などのサイトカインを産生し、周囲の免疫反応にも関わります。
(引用元:Myers JA, Miller JS, Nat Rev Clin Oncol, 2021)
NK細胞はどのように異常な細胞を見分ける?
NK細胞の特徴は、一つの目印だけで「攻撃する・しない」を決めているわけではないことです。細胞表面にある複数の受容体を使い、攻撃を促すシグナルと抑えるシグナルのバランスを読み取っています。
正常な細胞には、NK細胞に「攻撃しないように」と伝える目印があります。一方、ウイルス感染や腫瘍化などによって細胞の状態が変化すると、こうした抑制シグナルが弱まったり、NK細胞を活性化するシグナルが強くなったりすることがあります。
NK細胞が攻撃対象と判断すると、パーフォリンやグランザイムなどの分子を放出し、標的となった細胞を傷害します。
このように、NK細胞は単純に「免疫力を上げる細胞」なのではなく、複数の情報をもとに異常な細胞への反応を調整している免疫細胞です。
NK細胞療法はどのような仕組み?
NK細胞を利用した細胞療法の一つに、体外でNK細胞を増殖・活性化したうえで体内へ戻す「養子免疫細胞療法」という考え方があります。
一般的には、次のような工程で行われます。
- 血液から免疫細胞を採取する
- NK細胞を含む目的の細胞を体外で培養する
- 必要な品質確認を行う
- 培養した細胞を患者様へ投与する
- 投与後の体調や治療経過を確認する
ただし、採取方法や培養方法、投与する細胞数、投与間隔などは治療法や医療機関によって異なります。
また、「体外でNK細胞を増やして戻せば、必ず体内で十分に作用する」という単純な仕組みではありません。
投与されたNK細胞が体内でどの程度維持されるか、腫瘍組織へどの程度到達できるか、腫瘍周囲の免疫抑制環境からどのような影響を受けるかなど、多くの要素が関係します。NK細胞療法の研究では、こうした細胞の持続性や腫瘍微小環境への対応も重要な課題とされています。
NK細胞療法は医療の中でどう位置づけられている?
NK細胞を利用する免疫療法は、がん免疫療法を中心に研究が続けられている分野です。
現在は、自分自身のNK細胞を利用する方法だけでなく、他者由来のNK細胞、CARと呼ばれる人工的な受容体を組み込んだCAR-NK細胞など、さまざまなアプローチが研究されています。
一方で、NK細胞療法という名称だけから、すべての方法に同じ有効性が確立していると考えることはできません。対象となる疾患、細胞の由来、培養方法、投与方法などによって臨床的なエビデンスは異なります。
特に、がん治療を受けている方が検討する場合には、手術、薬物療法、放射線治療など、医学的に確立された標準治療との関係を整理することが重要です。
NK細胞療法を検討するために、標準治療を自己判断で中断したり、開始を遅らせたりすることは避ける必要があります。現在受けている治療や病状を踏まえ、主治医や治療を担当する医師と相談したうえで位置づけを考えます。
NK細胞療法を検討するときに確認したいこと
NK細胞療法は、「NK細胞にはがん細胞を攻撃する働きがある」という基礎医学上の事実だけで治療効果を判断できるものではありません。
治療を検討するときには、少なくとも次の点を確認することが大切です。
- 何を目的として治療を受けるのか
- 現在受けている標準治療との関係はどうなるのか
- 自分の病状についてどこまで根拠があるのか
- 治療方法、費用、想定されるリスクについて説明を受けているか
- 投与後にどのような経過観察を行うのか
「NK細胞を増やせば免疫が強くなる」「NK細胞療法を受ければがんを防げる」などと一律に考えるのではなく、自分の状態に対して何を期待でき、何がまだ明らかになっていないのかを確認することが重要です。
NK細胞療法について、あわせて確認したい記事
NK細胞療法の仕組みを理解する際は、免疫細胞療法全体の位置づけや、NK細胞を含む免疫細胞それぞれの役割、治療を検討するときの適応の考え方もあわせて整理すると理解しやすくなります。
免疫細胞療法とは?免疫療法との違いと知っておきたい注意点
免疫細胞とは?NK細胞・T細胞・B細胞は体の中で何をしている?
NK細胞療法はどんな人に向いている?免疫低下が気になる方へ適応の考え方を解説
まとめ
NK細胞は自然免疫を担う細胞の一つで、異常な細胞から発せられる複数のシグナルを読み取り、ウイルス感染細胞や腫瘍化した細胞などに反応します。
NK細胞療法では、この性質を治療に利用するため、採取した免疫細胞を体外で培養・活性化し、再び体内へ投与する方法などが検討されています。
一方、NK細胞療法の臨床的な位置づけは対象疾患や治療法によって異なり、研究が続いている領域も少なくありません。とくにがん治療では、標準治療に代わるものとして自己判断するのではなく、現在の病状や治療内容を踏まえて検討する必要があります。
NK細胞療法に関心がある場合は、「受けるべきかどうか」だけではなく、治療目的、現在行っている治療との関係、期待できることと限界を整理したうえで医師に相談することが大切です。
N2クリニック銀座本院の免疫細胞療法
N2クリニック銀座本院では、患者様の現在の状態や治療歴などを確認したうえで、免疫細胞療法を検討します。
NK細胞療法は自由診療です。治療の適否は一律ではなく、診察を行ったうえで判断します。また、がん治療中の方については、現在受けている標準治療との関係も含めて確認することが重要です。
治療内容の詳細は、免疫細胞療法の詳細からご確認ください。
監修クリニック情報
N2クリニック銀座本院
住所:東京都中央区銀座6丁目6-5 HULIC &New GINZA NAMIKI6 11階
TEL:03-3289-0202
診療時間:10:00〜18:30
休診日:日曜日
最寄駅:各線銀座駅B5番出口より徒歩4分
記事監修者名
竹島 昌栄(N2クリニック銀座本院 院長)
参考文献
- Myers JA, Miller JS. Exploring the NK cell platform for cancer immunotherapy. Nat Rev Clin Oncol. 2021;18:85–100.
- Shimasaki N, Jain A, Campana D. NK cells for cancer immunotherapy. Nat Rev Drug Discov. 2020;19:200–218.
- Maskalenko NA, Zhigarev D, Campbell KS. Harnessing natural killer cells for cancer immunotherapy: dispatching the first responders. Nat Rev Drug Discov. 2022;21:559–577.
- Laskowski TJ, Biederstädt A, Rezvani K. Natural killer cells in antitumour adoptive cell immunotherapy. Nat Rev Cancer. 2022;22:557–575.
