樹状細胞療法はどんな仕組み?T細胞へ情報を伝える役割から理解する
樹状細胞療法は、免疫細胞の一種である「樹状細胞」の情報伝達能力を利用する免疫細胞療法です。
樹状細胞の特徴は、自ら異常な細胞を直接攻撃することよりも、病原体や異常な細胞に由来する「抗原」という目印を取り込み、その情報をT細胞へ伝えることにあります。
ただし、樹状細胞が重要な免疫細胞であることと、樹状細胞療法によって特定の病気に効果が得られることは同じ意味ではありません。樹状細胞を利用した治療は研究が続いている領域もあり、対象となる疾患や治療法によって位置づけが異なります。
この記事では、樹状細胞が免疫に情報を伝える仕組みを中心に、樹状細胞療法を理解するための基本を整理します。
この記事でわかること
- 樹状細胞が免疫の中で担う役割
- 「抗原提示」によってT細胞へ情報を伝える仕組み
- 樹状細胞療法の基本的な考え方
- 治療を検討するときに知っておきたい位置づけ
目次
樹状細胞とはどのような免疫細胞?
樹状細胞は、体内に侵入した病原体や異常な細胞などの情報を集め、それをほかの免疫細胞へ伝える「抗原提示細胞」の一つです。
皮膚や粘膜など外部と接する場所を含め、体内のさまざまな組織に存在しています。
樹状細胞が重要なのは、自然免疫と獲得免疫をつなぐ役割を持つためです。
自然免疫は異物に素早く反応する仕組みで、獲得免疫は特定の抗原を認識して、より標的を絞った免疫反応を起こします。樹状細胞は異物の情報を取り込み、T細胞へ伝えることで、その後の獲得免疫が働くきっかけをつくります。
そのため、単純な「攻撃役」というより、免疫反応を始めるための情報を届ける役割を持った細胞と考えると理解しやすいでしょう。
(引用元:Cabeza-Cabrerizo M, Annu Rev Immunol, 2021)
樹状細胞はどのようにT細胞へ情報を伝える?
樹状細胞による情報伝達で重要なのが「抗原提示」です。
抗原とは、免疫細胞が標的を識別するときの目印となる物質です。樹状細胞は病原体や異常な細胞などに由来する物質を取り込み、細胞内で処理します。
その後、処理した抗原の一部をMHCと呼ばれる分子の上に載せ、細胞の表面に提示します。
樹状細胞はリンパ節などへ移動し、この抗原情報をT細胞へ示します。T細胞がその情報を認識し、さらに必要な刺激を受けることで、標的に応じた免疫反応が始まります。
がん免疫との関係では、とくに一部の樹状細胞が、がん細胞由来の抗原をCD8陽性T細胞へ提示する「クロスプレゼンテーション」という仕組みが重要視されています。
つまり樹状細胞は、異常を見つけるだけではなく、「何を標的にすべきか」という情報をT細胞へ橋渡しする役割を担っています。
(引用元:Heras-Murillo I, Nat Rev Clin Oncol, 2024)
樹状細胞療法はどのような仕組み?
樹状細胞療法では、この「抗原情報をT細胞へ伝える能力」を治療に利用することが検討されています。
樹状細胞を利用した治療には複数の方法がありますが、一般的な考え方としては、患者様から採取した細胞をもとに樹状細胞を培養し、治療の目的に応じた抗原情報を与えたうえで体内へ戻す方法などがあります。
体内に戻った樹状細胞が抗原情報をT細胞へ提示し、標的に対する免疫反応を誘導することが治療上の狙いです。
ここで重要なのは、樹状細胞そのものが大量にがん細胞を攻撃する治療ではないという点です。
樹状細胞は主に「情報を伝える側」であり、その情報を受け取ったT細胞などが免疫反応を担います。
また、どの抗原を利用するか、どのように樹状細胞を作製・成熟させるか、どのような方法で投与するかなどによって治療方法は異なります。樹状細胞療法をひとまとめにして効果を判断することはできません。
樹状細胞療法は医療の中でどう位置づけられている?
樹状細胞を利用した免疫療法は、とくにがん免疫療法の領域で長く研究されています。
樹状細胞がT細胞による抗腫瘍免疫の成立に重要なことは、現在の免疫学でも広く認識されています。一方で、樹状細胞を体外で培養して投与する治療については、がんの種類、病期、使用する抗原、作製方法などによって研究結果が異なります。
臨床研究では免疫反応が確認されるケースがある一方、それがすべての患者様で臨床的な治療効果につながるとは限りません。
そのため、樹状細胞療法については「免疫の仕組みとして理にかなっている」ことと、「個々の患者様にどの程度の臨床的利益が期待できるか」を分けて考える必要があります。
がん治療中の方は、手術、薬物療法、放射線治療などの標準治療を自己判断で中断したり、開始を遅らせたりせず、現在の治療計画との関係を医師と確認することが重要です。
樹状細胞療法を検討するときのポイント
樹状細胞療法について説明を受ける際は、「免疫を強くする治療」という言葉だけで判断しないことが大切です。
確認したいポイントとしては、次のようなものがあります。
- 何を目的として治療を行うのか
- どのような方法で樹状細胞を利用するのか
- 自分の疾患についてどの程度の医学的根拠があるのか
- 標準治療との関係をどのように考えるのか
- 費用や治療回数、リスクについて十分な説明があるか
樹状細胞は免疫反応の成立に重要な細胞ですが、腫瘍周囲には免疫の働きを抑制するさまざまな仕組みも存在します。
「樹状細胞が情報を伝えれば必ず十分な免疫反応が起こる」という単純な関係ではないことも、治療を理解するうえで重要です。
樹状細胞療法について、あわせて確認したい記事
樹状細胞療法の仕組みを理解する際は、免疫細胞療法全体の位置づけや、NK細胞・T細胞などほかの免疫細胞の役割、NK細胞療法との違いもあわせて整理すると理解しやすくなります。
免疫細胞療法とは?免疫療法との違いと知っておきたい注意点
免疫細胞とは?NK細胞・T細胞・B細胞は体の中で何をしている?
まとめ
樹状細胞は、抗原を取り込み、その情報をT細胞へ提示することで、自然免疫と獲得免疫をつなぐ役割を担っています。
樹状細胞療法は、この「免疫に標的の情報を伝える」という性質を治療に利用する考え方です。
ただし、樹状細胞の生理的な役割が明らかになっていることと、樹状細胞療法の有効性があらゆる疾患や患者様で確立していることは別です。治療方法や対象疾患によってエビデンスは異なります。
治療を検討する際には、仕組みだけでなく、現在受けている治療との関係、期待できること、限界やリスクについても確認したうえで判断することが大切です。
N2クリニック銀座本院の樹状細胞療法
N2クリニック銀座本院では、患者様の病状や治療歴などを確認したうえで、樹状細胞療法を含む免疫細胞療法について診察を行っています。
樹状細胞療法は自由診療です。治療の適否は一律ではなく、現在受けている治療なども踏まえて医師が判断します。
治療内容の詳細は、免疫細胞療法の詳細からご確認ください。
監修クリニック情報
N2クリニック銀座本院
住所:東京都中央区銀座6丁目6-5 HULIC &New GINZA NAMIKI6 11階
TEL:03-3289-0202
診療時間:10:00〜18:30
休診日:日曜日
最寄駅:各線銀座駅B5番出口より徒歩4分
記事監修者名
竹島 昌栄(N2クリニック銀座本院 院長)
参考文献
- Cabeza-Cabrerizo M, Cardoso A, Minutti CM, Pereira da Costa M, Reis e Sousa C. Dendritic Cells Revisited. Annu Rev Immunol. 2021;39:131-166.
- Heras-Murillo I, Adán-Barrientos I, Galán M, et al. Dendritic cells as orchestrators of anticancer immunity and immunotherapy. Nat Rev Clin Oncol. 2024;21:257-277.
- Chen Y, Zhang Y, Goedegebuure SP, Gillanders WE. Dendritic cell subsets and implications for cancer immunotherapy. Front Immunol. 2024.
- Pérez CR, De Palma M. Engineering dendritic cell vaccines to improve cancer immunotherapy. Nat Commun. 2019;10:5408.
