再生医療の歴史とは?幹細胞研究はどう発展したのか現在までを解説

幹細胞研究から現在の再生医療までの歴史をたどる記事のヒーロー画像

再生医療の歴史とは?幹細胞研究の発展と現在までの歩み

再生医療は、ある日突然生まれた治療ではありません。幹細胞の性質を明らかにする基礎研究から、ES細胞、iPS細胞、そして現在の細胞を用いた医療へと、長い研究の積み重ねによって発展してきました。

本記事では、再生医療の歴史を患者様にもわかりやすく振り返ります。

この記事でわかること

  • 再生医療・幹細胞研究の主な歴史
  • ES細胞やiPS細胞が研究に与えた影響
  • 研究段階の技術と現在受けられる医療の違い
  • 日本で再生医療を提供するための制度

再生医療の歴史は幹細胞研究とともに発展してきた

現在「再生医療」と呼ばれている医療の背景には、数十年にわたる細胞研究があります。

特に重要なのが、幹細胞が持つ「自分と同じ細胞をつくる能力」と「異なる種類の細胞へ変化する能力」についての研究です。こうした基礎研究が積み重なったことで、細胞の性質を医療に応用しようという考え方が発展してきました。

ただし、研究で示された可能性と、現在実際に患者様へ提供されている治療は同じものではありません。再生医療を理解するときは、「研究の歴史」と「現在の医療としての位置づけ」を分けて考えることが大切です。

1961年の造血幹細胞研究からES細胞、iPS細胞、2014年の制度整備まで再生医療の歴史を時系列で整理した図解

1960年代|幹細胞の存在が科学的に示される

幹細胞研究の大きな転機の一つが、1960年代の造血幹細胞研究です。

1961年、カナダの研究者James TillとErnest McCullochらは、マウスの骨髄細胞を用いた実験から、血液細胞を生み出すもとになる細胞の存在を示しました。この研究は、現在につながる幹細胞研究の重要な基盤の一つとされています。

ここから、「成熟した組織の中にも、新しい細胞を生み出す細胞が存在する」という考え方が科学的に検証されていきました。

現在研究されている間葉系幹細胞(MSC)なども、こうした長年の幹細胞研究の延長線上にあります。

1960年代の骨髄研究とTill、McCullochらの研究から造血幹細胞の存在が示されていった流れを解説する図解

1980〜1990年代|ES細胞研究が発展

その後、研究は「さまざまな細胞になれる細胞」へと広がります。

1980年代にはマウスの胚性幹細胞(ES細胞)の研究が進み、1998年にはJames ThomsonらによってヒトES細胞株が樹立されました。

ES細胞は多くの種類の細胞へ分化できる性質を持つため、発生の仕組みや病気の研究、再生医療への応用を考えるうえで重要な存在となりました。

一方、ヒトの胚を由来とするため倫理的な課題もあり、研究をどのようなルールのもとで進めるかについて議論が続いてきました。

ES細胞の多能性と1998年のヒトES細胞株樹立が幹細胞研究を前進させた流れを示す図解

2000年代|iPS細胞の登場で研究が大きく前進

2006年、山中伸弥氏らは、成熟した細胞に特定の因子を導入することで、さまざまな細胞へ変化できる状態に戻せることを報告しました。これがiPS細胞(人工多能性幹細胞)です。

この発見は「成熟した細胞の状態は固定されたものではなく、初期化できる」という理解につながり、幹細胞研究に大きな影響を与えました。

2012年には、この発見により山中伸弥氏とJohn B. Gurdon氏がノーベル生理学・医学賞を受賞しています。

iPS細胞は現在も、病気の仕組みの解明、創薬、細胞を利用した治療法の研究など、さまざまな分野で研究が続けられています。

成熟した体細胞からiPS細胞を作製し、さまざまな細胞への分化研究が広がった2000年代の進展を示す図解

2010年代以降|研究から医療への橋渡しが進む

幹細胞研究が進むにつれて、日本でも再生医療を安全性に配慮しながら提供・研究するための制度整備が進みました。

2014年11月には「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」が施行され、再生医療等を提供する際の手続きや安全性確保のための仕組みが整備されました。

重要なのは、「幹細胞研究が進んでいる」ことと、「あらゆる病気に対して効果が確立している」ことは別だという点です。

再生医療には、すでに医療として実用化されているもの、一定の制度のもとで提供されているもの、臨床研究中のもの、基礎研究段階のものがあります。

そのため、再生医療を検討するときは、「幹細胞なら何でも同じ」と考えるのではなく、

  • どのような細胞を使うのか
  • 何を目的とした治療なのか
  • どのような根拠があるのか
  • どのようなリスクや限界があるのか

を確認することが大切です。

基礎研究、臨床研究、制度整備を経て再生医療を患者へ提供するまでの橋渡しを整理した図解

歴史を知ると現在の再生医療が理解しやすくなる

再生医療の歴史を見ると、現在の医療が一つの発見だけから生まれたものではないことがわかります。

造血幹細胞の研究、ES細胞、iPS細胞など、それぞれ異なる研究が積み重なり、「細胞そのものや細胞の働きを医療へ応用する」という現在の再生医療につながってきました。

一方で、ES細胞、iPS細胞、患者様自身の組織から得られる幹細胞などは、それぞれ性質も使われ方も異なります。

N2クリニック銀座本院で扱う幹細胞療法についても、「iPS細胞を用いる治療」という意味ではありません。患者様自身から採取した細胞を利用する治療について、適応や治療内容を医師が個別に確認したうえで検討します。

再生医療に関心がある方は、「再生医療という言葉」だけで判断するのではなく、自分の場合はどのような治療が検討できるのか、何を期待でき、何がまだ明らかではないのかまで確認することが重要です。

再生医療の基礎研究、臨床研究と現在受けられる医療を分けて考える重要性を整理した図解

再生医療について、さらに詳しく知りたい方へ

再生医療の歴史を知ったうえで、現在の再生医療の考え方や、幹細胞そのものの特徴、実際の幹細胞治療について確認すると、研究と現在の医療の違いを整理しやすくなります。

再生医療の現在の考え方を知りたい

再生医療とは?薬や手術との違いを「治療の目的」から解説

幹細胞の種類や基本的な特徴を知りたい

幹細胞の基本と、再生医療との関係

現在の治療について知りたい方へ

幹細胞研究の歴史と、現在実際に行われている幹細胞治療は分けて理解することが大切です。治療としての仕組みや特徴はこちらで確認できます。

現在の幹細胞治療について知りたい

幹細胞治療とは?仕組み・特徴・治療前に知るべきことを解説

まとめ

再生医療の発展には、半世紀以上にわたる幹細胞研究の積み重ねがあります。

1960年代の幹細胞研究から、ES細胞、iPS細胞の発見へと研究が進み、現在では細胞を医療に利用するための研究や制度整備が続いています。

ただし、研究の進歩がそのまますべての治療効果を意味するわけではありません。現在受けられる再生医療については、使用する細胞、対象となる状態、期待されること、リスクや限界をそれぞれ確認する必要があります。

クリニック案内

N2クリニック銀座本院では、再生医療・幹細胞療法について、患者様の状態や治療歴などを確認しながらご相談をお受けしています。

治療を決めてから相談するのではなく、「自分が検討対象になるのか知りたい」という段階でも、医師と情報を整理することができます。

治療内容や費用、適応について確認したい方は、からご確認ください。

監修クリニック情報

N2クリニック銀座本院
住所:東京都中央区銀座6丁目6-5 HULIC &New GINZA NAMIKI6 11階
TEL:03-3289-0202
診療時間:10:00〜18:30
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最寄駅:各線銀座駅B5番出口より徒歩4分

N2クリニックとは

記事監修者名

竹島 昌栄(N2クリニック銀座本院 院長)

医師紹介

参考文献

  1. Till JE, McCulloch EA. A Direct Measurement of the Radiation Sensitivity of Normal Mouse Bone Marrow Cells. Radiation Research. 1961.
  2. Thomson JA, et al. Embryonic Stem Cell Lines Derived from Human Blastocysts. Science. 1998;282(5391):1145-1147.
  3. Takahashi K, Yamanaka S. Induction of Pluripotent Stem Cells from Mouse Embryonic and Adult Fibroblast Cultures by Defined Factors. Cell. 2006;126(4):663-676.
  4. The Nobel Assembly at Karolinska Institutet. The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2012.
  5. 厚生労働省 「再生医療等について:関係法令、その他関係通知等」
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