自分の細胞を使う治療の安全性はどう考える?注意点も含めて解説
自分の脂肪や血液などから採取した細胞を利用する治療を「自家細胞治療」と呼びます。
自分自身に由来する細胞を使うため、他人由来の細胞と比べて免疫学的な拒絶反応について考慮する点が異なります。しかし、自家細胞であることだけを理由に、治療全体の安全性が保証されるわけではありません。
安全性を考えるときには、細胞そのものだけでなく、採取方法、培養・加工、投与方法、患者様の全身状態、治療後の管理まで含めて確認する必要があります。
この記事でわかること
- 自家細胞治療と他人由来の細胞を使う治療の違い
- 「自分の細胞だから安全」と言い切れない理由
- 細胞の採取・培養・投与で考えられるリスク
- 治療を検討するときに確認しておきたいこと
自家細胞治療とは
自家細胞治療とは、患者様自身から採取した細胞を治療に利用する方法です。
再生医療では、たとえば脂肪組織から採取した間葉系幹細胞(MSC)を培養し、治療目的に応じて体内へ投与する方法があります。免疫細胞療法でも、自分自身の血液から免疫細胞を採取して利用する方法があります。
一方、別の人から提供された細胞を利用するものは「他家細胞」と呼ばれます。
この「自家か他家か」は安全性を考えるうえで重要な要素の一つですが、それだけで治療全体の安全性が決まるわけではありません。
自分の細胞を使うことにはどのような特徴がある?
自家細胞を利用する特徴の一つは、他人由来の細胞に対する免疫反応を考慮する必要性が異なることです。
私たちの免疫には、自分自身のものと外部から入ってきたものを識別する仕組みがあります。他人の細胞を投与した場合には、その細胞に対して免疫反応が起こる可能性があります。
自家細胞では、このような「他人由来であること」に伴う免疫学的な問題を避けられる点が特徴です。
実際に、間葉系間質細胞(MSC)を用いた臨床研究をまとめた報告では、多くの研究で安全性について検討が行われています。一方で、発熱などの有害事象が報告されており、長期的な評価を含めて今後も検証が必要とされています。
(引用元:Wang et al., Stem Cell Research & Therapy, 2021)
つまり、「自分の細胞を使う」という点には一定の意味がありますが、リスクがなくなるという意味ではありません。
自家細胞治療にもリスクはある
安全性を考える際には、治療を「細胞を投与する瞬間」だけで捉えないことが大切です。
細胞を採取するときのリスク
脂肪組織由来の幹細胞を利用する場合には、まず脂肪組織を採取します。
採取に伴って、
- 痛み
- 出血や内出血
- 腫れ
- 感染
などが起こる可能性があります。
どの程度のリスクがあるかは、採取方法や患者様の健康状態などによっても異なります。
培養・加工に伴うリスク
採取した細胞を培養して増やす治療では、体外で細胞を取り扱う工程があります。
このため、細胞そのものだけでなく、
- 微生物による汚染を防ぐ管理
- 培養環境や作業手順
- 製造・試験の記録
- 投与前の品質確認
- 保存や輸送の管理
などが重要です。
厚生労働省も、細胞の採取から製造、輸送、医療機関での投与に至るまで、一連の工程で微生物汚染のリスク管理が必要であるとしています。
投与に伴うリスク
細胞を点滴や注射などで投与する場合には、投与方法に応じたリスクも考える必要があります。
MSCを用いた臨床研究では、一過性の発熱や投与部位に関連する有害事象などが報告されています。脂肪由来細胞治療を対象とした過去のレビューでは、投与経路や対象疾患によっては血栓塞栓症などが報告された例もあり、安全性評価を継続する重要性が指摘されています。
(引用元:Toyserkani et al., Stem Cells Translational Medicine, 2017)
したがって、「自己細胞なので副作用が起こらない」と考えるのは適切ではありません。
安全性は「細胞の由来」だけでは決まらない
再生医療の安全性は、複数の要素によって成り立っています。
特に重要なのは、
- どのような患者様に治療を行うか
- どこから、どのように細胞を採取するか
- 細胞をどのように培養・加工するか
- 投与前にどのような品質確認を行うか
- どの量を、どの経路から投与するか
といった点です。
また、年齢、基礎疾患、感染症の有無、服用している薬などによっても、治療を受けられるかどうかの判断は変わります。
「自分の細胞だから大丈夫」という一つの条件だけを見るのではなく、治療の工程全体と患者様ごとの状態を合わせて評価することが重要です。
治療前に確認しておきたいポイント
自家細胞を用いた治療を検討するときは、効果について質問するだけでなく、安全性についても説明を受けることが大切です。
たとえば、
- 自分の状態が治療の適応になるのか
- どのように細胞を採取・加工するのか
- どのような副作用や合併症が考えられるのか
- 治療後にどのような経過観察を行うのか
- 現時点で分かっていないことは何か
を確認すると、治療を検討するための情報を整理しやすくなります。
再生医療等提供計画が提出・受理されていることも確認項目の一つですが、届出があることと、個々の患者様への効果や安全性が保証されることは同じではありません。
十分な説明を受けたうえで、期待できることだけでなく、リスクや限界についても理解して判断することが重要です。
幹細胞治療について、あわせて確認したい記事
自家細胞治療の安全性を考える際は、幹細胞治療の基本的な仕組みだけでなく、細胞の品質管理や、治療を検討するときの確認事項もあわせて整理しておくと理解しやすくなります。
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幹細胞治療の品質は何で決まる?培養・無菌性・出荷判定まで解説
幹細胞治療を検討する前に知っておきたいこと|よくある疑問を整理
まとめ
自家細胞治療には、患者様自身の細胞を利用するという特徴があります。他人由来の細胞を使う場合とは免疫学的な条件が異なりますが、だからといって「自分の細胞なら安全」と断定することはできません。
安全性を考えるには、細胞の由来だけでなく、
- 採取
- 培養・加工
- 品質管理
- 投与方法
- 患者様の状態
- 治療後の経過観察
まで含めて見る必要があります。
再生医療を検討するときは、「自家細胞だから安心か」という問いだけでなく、自分の場合にどのような利益とリスクが考えられるのかを医師と確認することが大切です。
クリニック案内
N2クリニック銀座本院では、脂肪組織由来の自家間葉系幹細胞を用いた治療について、再生医療等安全性確保法に基づく再生医療等提供計画を提出・受理されたうえで提供しています。
治療を検討する際には、患者様の状態や治療目的を確認し、治療内容だけでなく、考えられるリスクや治療後の経過観察についても説明したうえで適応を判断します。
「自分の場合は治療の対象になるのか」「安全性について詳しく確認したい」といった疑問がある場合は、診察時にご相談ください。
治療内容や費用、適応について確認したい方は、ご予約・ご相談からご確認ください。
監修クリニック情報
N2クリニック銀座本院
住所:東京都中央区銀座6丁目6-5 HULIC &New GINZA NAMIKI6 11階
TEL:03-3289-0202
診療時間:10:00〜18:30
休診日:日曜日
最寄駅:各線銀座駅B5番出口より徒歩4分
記事監修者名
竹島 昌栄(N2クリニック銀座本院 院長)
参考文献
- 厚生労働省. 再生医療等の安全性の確保等に関する法律について
- 厚生労働省. 特定細胞加工物等の微生物学的安全性に関する指針 第2版.2026年6月12日改訂.
- Wang Y, Yi H, Song Y. The safety of MSC therapy over the past 15 years: a meta-analysis. Stem Cell Research & Therapy. 2021;12:545.
- Toyserkani NM, Jørgensen MG, Tabatabaeifar S, Jensen CH, Sheikh SP, Sørensen JA. A Safety Assessment of Adipose-Derived Cell Therapy in Clinical Trials: A Systematic Review of Reported Adverse Events. Stem Cells Translational Medicine. 2017;6(9):1786–1794.
