同じ幹細胞治療でも結果に差が出るのはなぜ?背景を解説
幹細胞治療では、同じ名称の治療を受けても、治療後の変化やその現れ方がすべての方で同じになるわけではありません。その背景には、年齢や病気の状態といった患者様側の条件だけでなく、使用する細胞の状態、培養工程、投与方法など、複数の要因が関係しています。「細胞を投与すれば同じ結果になる」と考えるのではなく、治療全体を見て判断することが大切です。
この記事でわかること
- 幹細胞治療で個人差が生じる主な理由
- 使用する幹細胞の状態と品質管理の考え方
- 投与量や投与方法など治療設計との関係
- 治療結果を見るときに知っておきたいポイント
目次
患者様の状態によって反応は異なる
まず知っておきたいのは、幹細胞治療の結果は細胞だけで決まるものではないという点です。
治療を受ける方の身体の状態には、一人ひとり違いがあります。たとえば、
- 年齢
- 症状や疾患の種類、進行度
- 炎症や組織損傷の程度
- 基礎疾患や服用している薬
- 身体活動や生活習慣
などが異なります。
同じ変形性膝関節症でも、軟骨や骨、滑膜などの状態は患者様ごとに異なります。そのため、同じ方法で細胞を投与したとしても、痛みや機能の変化が同じ時期・同じ程度に現れるとは限りません。
MSC(間葉系間質細胞)を用いた治療についても、どのような患者群がより反応しやすいかを明らかにする研究が続けられており、現時点ですべての患者様の治療反応を事前に正確に予測できるわけではありません。
幹細胞そのものにも違いがある
幹細胞は、一般的な薬剤のように「同じ成分を一定量含む製品」とは性質が異なります。
脂肪組織由来や骨髄由来など採取する組織が異なるだけでなく、同じ種類の細胞でも、採取した方や細胞の状態によって増殖性や生物学的な働きに差がみられることがあります。
また、MSCでは、自ら別の組織になる働きだけでなく、周囲へさまざまな物質を分泌し、免疫や炎症、組織修復に関わる環境へ作用する仕組みが研究されています。
そのため、単純に「投与する細胞数が多いほど結果がよい」とは言えません。細胞数だけではなく、生存率や性質なども含めて評価する必要があります。
培養・品質管理も治療を支える重要な要素
採取した幹細胞を培養して使用する治療では、どのように細胞を培養し、管理するかも重要です。
研究では、MSCの性質は培養条件や培養期間、保存・調製方法などの影響を受ける可能性が示されています。近年のレビューでも、細胞の採取方法、培養工程、保存、投与前の調製方法などが研究ごとに異なり、治療成績を単純に比較することが難しいと指摘されています。
品質管理では、たとえば、
- 細胞の同一性や状態
- 生存率
- 無菌性
- 培養工程の管理
- 投与前の確認
などが重要になります。
ただし、厳格な品質管理を行えば必ず良い治療結果が得られるという意味ではありません。品質管理は、細胞治療を一定の基準のもとで提供するうえで重要な要素の一つと考えるのが適切です。
投与方法や治療設計も一律ではない
幹細胞治療では、どこに、どの程度、どのように投与するかも治療目的によって異なります。
たとえば、関節への局所投与と静脈からの投与では、細胞が体内でたどる経路も異なります。また、投与量についても「多ければ多いほどよい」という単純な関係が確立されているわけではありません。
近年の研究でも、MSC治療では投与量や投与経路の違いが研究結果のばらつきに関係する可能性が指摘されており、適切な投与設計について検討が続けられています。
だからこそ、治療名だけを見るのではなく、何を目的に、どのような方法で治療を行うのかを確認することが大切です。
「結果」は何を基準に見るかが重要
治療結果を考える際には、「効いた」「効かなかった」という二択だけで判断しないことも重要です。
たとえば膝の治療であれば、
- 痛みがどの程度変化したか
- 歩行や階段昇降などの動作がどう変わったか
- 日常生活で困る場面が減ったか
- 一定期間後の状態がどう推移しているか
など、複数の視点から経過を確認します。
変化が現れるまでの期間にも個人差があり、治療直後だけで評価できない場合があります。一方で、十分な変化が得られない可能性もあります。
事前に「何を治療目標とするのか」を医師と共有しておくことが、治療後の評価にもつながります。
幹細胞治療を検討するときに確認したいこと
同じ「幹細胞治療」という名称であっても、その内容がすべて同じとは限りません。
治療を検討するときは、
- 自分の状態が治療の対象となるのか
- どのような細胞を使用するのか
- どのような方法で培養・品質管理しているのか
- どのような方法・目的で投与するのか
- 期待できることだけでなく限界やリスクも説明されているか
を確認しておくとよいでしょう。
特に自由診療の再生医療では、治療のメリットだけではなく、現在わかっていることと、まだ十分に明らかになっていないことの両方を理解したうえで判断することが重要です。
幹細胞治療について、あわせて確認したい記事
幹細胞治療の結果に差が生じる背景を理解したあとは、治療に用いる細胞の品質や、治療後の経過の見方、実際に治療を検討するときの確認事項もあわせて整理しておくと理解しやすくなります。
幹細胞治療の品質は何で決まる?培養・無菌性・出荷判定まで解説
幹細胞治療の経過はどう進む?経過の見方と個人差を解説
幹細胞治療を検討する前に知っておきたいこと|よくある疑問を整理
まとめ
同じ幹細胞治療でも治療後の経過が一様ではない背景には、患者様の身体の状態、細胞そのものの特性、培養・品質管理、投与方法や治療設計など、複数の要因があります。
そのため、細胞数や治療名といった一つの要素だけで判断するのではなく、どのような患者様に、どのような細胞を、どのような目的と方法で投与するのかまで含めて考えることが重要です。また、治療後の評価についても、症状や機能、経過など複数の視点から確認する必要があります。
クリニック案内
N2クリニック銀座本院では、脂肪組織由来の幹細胞を用いた自由診療を行っています。
治療を検討する際は、症状や既往歴、検査結果などを確認し、医師が適応を判断します。治療内容や考えられるリスク、治療後の評価方法などについて説明を受けたうえで、ご自身の状態に合った選択を検討することが大切です。
監修クリニック情報
N2クリニック銀座本院
住所:東京都中央区銀座6丁目6-5 HULIC & New GINZA NAMIKI6 11階
TEL:03-3289-0202
診療時間:10:00〜18:30
休診日:日曜日
最寄駅:各線銀座駅B5番出口より徒歩4分
記事監修者名
竹島 昌栄(N2クリニック銀座本院 院長)
参考文献
- Pittenger MF, et al. Multilineage potential of adult human mesenchymal stem cells. Science. 1999;284(5411):143-147.
- Caplan AI, Correa D. The MSC: an injury drugstore. Cell Stem Cell. 2011;9(1):11-15.
- Aabling RR, et al. A Narrative Review on Manufacturing Methods Employed in the Production of Mesenchymal Stromal Cells for Knee Osteoarthritis Therapy. Biomedicines. 2025;13(2):509.
- Im GI. Clinical updates in mesenchymal stromal cell therapy for osteoarthritis treatment. Expert Opin Biol Ther. 2025;25(2):187-195.
- U.S. Food and Drug Administration. Potency Tests for Cellular and Gene Therapy Products. 2011.
- U.S. Food and Drug Administration. Potency Assurance for Cellular and Gene Therapy Products. 2023.
