“治療としての上清”と“美容の商品としての上清”の違い─ 同じ「上清」でも全く別物である理由 ─

幹細胞培養上清(Culture Supernatant)は、幹細胞を培養する際に得られる液体で、成長因子やサイトカインなどの有用成分が含まれています。しかし、市場には 医療現場で治療として使用する上清 と、美容目的の商品として販売される上清(美容上清) が存在し、両者は似ているようで“安全性・品質・用途”が大きく異なります。

現場で多くの患者様を診ていると、両者の違いを誤解されている方が非常に多く、トラブルの原因にもなり得ます。本コラムでは、その本質的な違いを医療者の視点からわかりやすく解説します。



1. 製造基準の違い

── 医療は「治療」、美容は「化粧品・美容液」の扱い

● 治療用上清(医療上清)
    •    医療法・再生医療等安全性確保法の対象
    •    施設許可・管理者・安全管理責任者が必要
    •    クリーンルーム(GMP相当)、無菌試験、エンドトキシン試験などの厳格な品質検査
    •    ウイルス検査を含むドナー検査が必須
    •    投与量・投与方法の設計が求められる

● 美容商品としての上清(美容上清)
    •    法的には「化粧品」「美容液」に分類
    •    医療レベルの検査義務はない
    •    生細胞の使用は禁止されていれば販売は可能
    •    品質基準はメーカーによって大きく差がある
    •    成分濃度が低いものも多い

▶ まとめ: 医療で使う上清は“治療に適した安全性レベル”が確保されているが、美容目的の上清は“化粧品としての安全基準レベル”。



2. 成分濃度・純度の違い

──「同じ量でも効果が違う」最大の理由

● 治療用上清
    •    成長因子・サイトカイン濃度が高い
    •    不純物が除去され、純度が一定
    •    目的の細胞機能(抗炎症、組織修復、免疫調整)を狙った調整が可能

● 美容用上清
    •    成分濃度は医療に比べて大幅に低い
    •    防腐剤や美容液成分を混ぜる場合もある
    •    純度や成分量はブランドによってバラつく

▶ まとめ: 治療用は“治すための濃度設計”、美容用は“肌の調子を整えるための濃度”。



3. 効果の違い

── 医療は「臨床効果」・美容は「化粧品効果」

● 治療としての上清
    •    炎症の抑制
    •    組織の修復促進
    •    慢性痛や免疫バランスの改善
    •    エイジング症状の医学的改善
    •    医師による投与(点滴・局所注射など)

● 美容の商品としての上清
    •    うるおい向上
    •    ハリ・ツヤを感じやすい
    •    肌の調子を整える
    •    一般的には角質層への作用のみ

▶ まとめ: 医療は“体内の機能改善”、美容は“表面の調子改善”。



4. 安全性管理の違い

── どこで、誰が、どう扱うかが最も大きい

● 治療用
    •    医師が診察し、投与量・頻度を管理
    •    副作用のモニタリング
    •    詳細なインシデント報告が義務
    •    法律に沿った保存・管理が必須

● 美容用
    •    サロン・エステ・個人でも使用可能
    •    医療行為ではないため診断は不要
    •    保存状態の管理は製造会社に依存

▶ まとめ: 医療は“医師責任のもとで安全管理”、美容は“化粧品としての自主基準”。



5. 価格帯と提供形態の違い

項目    治療としての上清    美容商品としての上清
価格帯    高価格帯(医療行為含む)    比較的手頃~高価格まで幅広い
提供方法    点滴・注射・医療施術    美容液・導入液
誰でも使える?    医師管理下のみ    誰でも購入可能




6. なぜクリニックは「医療上清」を選ぶべきなのか

    •    患者の体内に入るものだから、医療レベルの安全性が必須
    •    効果の再現性が高い(濃度・純度・検査レベルが一定)
    •    治療目的に合わせた調整ができる
    •    副作用管理が可能

美容上清は気軽に使えるメリットがありますが、医療効果を求める患者様には不十分です。



まとめ

──「目的が違えば、必要な上清も違う」

    •    治療としての上清 → 医療行為・臨床効果の追求・安全性が最重要
    •    美容商品としての上清 → 日常の美容ケアとして使用する化粧品レベルのアイテム

同じ「上清」という言葉でも、目的・品質・安全性は全くの別物です。
クリニックとしては、患者様に誤解が生じないよう、両者の違いをしっかり説明することが信頼構築につながります。



 

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【記事監修】井上将之(N2クリニック銀座本院)

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