幹細胞培養上清液の抗炎症作用とは?過剰な炎症反応との関係
炎症は、私たちの体がダメージや異物に反応して起こす「防御反応」です。けがや感染から体を守るために必要な働きですが、炎症が長く続いたり過剰になったりすると、肌トラブル、関節の違和感、慢性的な疲労感など、さまざまな不調に関わることがあります。
近年、再生医療の分野では、幹細胞培養上清液に含まれるサイトカイン、成長因子、エクソソームなどの成分が、炎症反応の調整に関わる可能性について研究されています。
この記事では、幹細胞培養上清液がどのように炎症と関係するのか、抗炎症作用の仕組みに絞ってわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 炎症が長引くと体に負担がかかる理由
- 幹細胞培養上清液に含まれる抗炎症関連成分
- 炎症性サイトカイン、エクソソーム、免疫バランスとの関係
- 治療を検討する際に確認したい注意点
目次
炎症とは、体を守るための防御反応
炎症は、体が傷ついた組織を修復したり、外から入ってきた異物に対応したりするために起こる自然な反応です。赤み、腫れ、熱感、痛みなどは、免疫細胞や血管が働いているサインでもあります。
たとえば、皮膚をすりむいたときに赤くなる、関節に負担がかかったときに腫れや痛みが出る、肌荒れの部分が熱を持つといった変化は、体が修復に向けて反応している状態です。
一方で、炎症が長く続くと、組織に負担がかかることがあります。慢性的な炎症は、肌の赤み、炎症性ニキビ、関節の違和感、慢性的な疲労感、加齢に伴う体の変化などと関係する可能性が指摘されています。
そのため医療では、炎症を単純に「悪いもの」と考えるのではなく、必要な炎症反応を保ちながら、過剰な炎症を整えることが大切です。

幹細胞培養上清液に含まれる抗炎症関連成分
幹細胞培養上清液とは、幹細胞を培養した際に得られる上澄み液のことです。医療・研究分野では「幹細胞培養上清」や「Secretome」と呼ばれることもあります。
上清液には、サイトカイン、成長因子、エクソソームなど、細胞同士の情報伝達に関わる成分が含まれるとされています。なかでも、IL-10、TGF-β、HGFは、抗炎症作用との関連が研究されている代表的な因子です。
IL-10は、炎症を落ち着かせる方向に働くサイトカインとして知られています。炎症を引き起こすIL-1βやTNF-αなどの過剰な働きに対して、ブレーキのような役割を持つと考えられています。
TGF-βは、免疫反応の調整や組織修復に関わる因子です。炎症で乱れた組織環境を整える働きに関係するとされ、皮膚や組織修復の分野でも研究されています。
HGFは、肝細胞増殖因子と呼ばれる成長因子で、抗炎症や組織修復に関わる可能性があります。慢性的な炎症や組織ダメージとの関係についても、さまざまな研究が行われています。
ただし、これらの成分が含まれているからといって、すべての症状に同じような効果が期待できるわけではありません。実際の反応は、体の状態、治療目的、投与方法、製剤の品質などによって異なります。

炎症性サイトカインの過剰な働きを調整する仕組み
炎症が長引く背景には、炎症性サイトカインと呼ばれる物質が過剰に働いていることがあります。炎症性サイトカインは体を守るために必要なものですが、増えすぎると炎症を持続させる要因になります。
代表的な炎症性サイトカインには、TNF-α、IL-1β、IL-6、IFN-γなどがあります。これらは免疫反応を活性化させる一方、過剰になると痛み、腫れ、赤み、組織への負担に関係することがあります。
幹細胞培養上清液に含まれる成分は、こうした炎症性サイトカインの過剰な産生を抑えたり、炎症に関わる細胞の反応を調整したりする可能性が研究されています。
わかりやすくいうと、炎症のアクセルが踏まれ続けている状態に対して、上清液に含まれる成分がブレーキのように働き、炎症反応のバランスを整える方向に関わるイメージです。
ただし、炎症は体に必要な反応でもあります。重要なのは、炎症を一律に止めることではなく、過剰になった炎症反応を落ち着かせ、修復に向かいやすい環境を整えるという考え方です。

エクソソーム・免疫バランス・抗酸化作用との関係
幹細胞培養上清液の抗炎症作用は、サイトカインだけで説明されるものではありません。エクソソーム、免疫バランス、抗酸化作用など、複数の仕組みが関わると考えられています。
エクソソームは、細胞が分泌するナノサイズのカプセルのような構造物です。中には、miRNA、タンパク質、成長因子などが含まれ、周囲の細胞へ情報を届ける役割を持つと考えられています。miRNAは、炎症に関わる遺伝子の働きを調整する可能性が研究されている物質です。
また、炎症は免疫バランスの乱れによって長引くことがあります。Th1/Th2、Th17/Tregといった免疫細胞のバランスは、炎症反応と深く関係しています。特にTreg細胞は、過剰な免疫反応を抑える方向に働く細胞として注目されています。
幹細胞由来の分泌成分は、こうした免疫細胞のバランスに関わり、炎症が過剰に続く状態を整える可能性が研究されています。
さらに、炎症の背景には酸化ストレスが関係することがあります。酸化ストレスとは、活性酸素が増えすぎて細胞に負担をかけている状態のことです。幹細胞培養上清液には、SODなど抗酸化に関わる因子が含まれる場合があり、活性酸素による細胞への負担を軽減する方向に関与する可能性があります。
つまり、幹細胞培養上清液の抗炎症作用は、炎症性サイトカインを抑えるだけでなく、細胞間の情報伝達、免疫バランス、酸化ストレスの調整が重なって成り立つと考えられています。

抗炎症作用が研究されている領域
幹細胞培養上清液の抗炎症作用は、慢性的な炎症や組織修復が関係する領域で研究されています。特に、炎症が長引くことで症状が続くケースでは、上清液に含まれる成分の働きが注目されています。
研究や臨床応用の検討が行われている領域には、次のようなものがあります。
- 肌の赤みや炎症性ニキビ
- アトピー性皮膚炎などの炎症性皮膚症状のサポート
- 関節の痛みや違和感
- 自己免疫に関わる炎症反応
- 肝機能に関わる慢性炎症
- 慢性的な疲労感や倦怠感との関係
- 加齢に伴う慢性炎症
ただし、これらは「必ず改善する」という意味ではありません。症状の原因は一人ひとり異なり、炎症以外の要因が関わっていることもあります。
そのため、幹細胞培養上清液を検討する際は、現在の症状がどのような背景で起きているのかを確認し、必要に応じて検査や診察を受けたうえで判断することが大切です。

治療を検討する前に確認したいこと
幹細胞培養上清液は、含まれる成分だけでなく、製造、保管、投与までの管理体制によって品質が左右されます。治療を検討する場合は、成分名やイメージだけで判断せず、医療機関で具体的な説明を受けることが重要です。
確認したいポイントは、次のとおりです。
- どのような由来の培養上清液を使用しているか
- 無菌性や品質管理について説明があるか
- 治療目的と投与方法が明確か
- 費用、回数、リスク、副作用の説明があるか
- 自分の症状や目的に合うかを医師が判断しているか
特に自由診療では、治療内容、費用、期待できる範囲、限界を理解したうえで選択する必要があります。広告やSNS上の情報だけで判断せず、医師の診察を受け、メリットと注意点を確認しましょう。

幹細胞培養上清液について、あわせて確認したい記事
抗炎症作用について理解を深めるには、まず幹細胞培養上清液の基本的な成分や、幹細胞治療との違いを整理しておくことが大切です。
幹細胞培養上清液とは?幹細胞培養液・幹細胞治療との違いを医師監修で解説
まとめ
幹細胞培養上清液の抗炎症作用は、ひとつの成分だけで起こるものではなく、複数の成分が同時に関わることで成り立つと考えられています。
主な仕組みとしては、次のようなものがあります。
- IL-10、TGF-β、HGFなどの抗炎症関連成分
- TNF-α、IL-1β、IL-6などの炎症性サイトカインの調整
- エクソソームによる細胞間コミュニケーション
- Th1/Th2、Th17/Tregなどの免疫バランスへの関与
- 抗酸化作用による炎症環境の調整
幹細胞培養上清液は、炎症を単純に抑え込むのではなく、過剰な炎症反応を整え、組織が修復に向かいやすい環境づくりに関わる可能性があります。
一方で、すべての症状に同じ効果が期待できるわけではなく、適応や反応には個人差があります。治療を検討する際は、目的、リスク、費用、品質管理について十分に確認し、医師と相談しながら判断することが大切です。
クリニック案内
N2クリニック銀座本院では、再生医療や幹細胞に関するご相談に対して、患者様の状態や目的を確認したうえで、治療の考え方、期待できる範囲、注意点を丁寧にご説明しています。
幹細胞培養上清液や再生医療に関心がある方は、現在のお悩みや既往歴、治療歴などを踏まえたうえで、治療内容や費用、適応について医師にご相談ください。詳しくは、ご予約・ご相談からご確認いただけます。
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休診日:日曜日
最寄駅:各線銀座駅B5番出口より徒歩4分
記事監修者名
竹島 昌栄(N2クリニック銀座本院 院長)
参考文献
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https://www.nature.com/articles/s41598-022-08398-4 - Regmi S, et al. An overview of the current advances in the treatment of inflammatory diseases using mesenchymal stromal cell secretome. PubMed, 2023.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36786742/ - Jankowski M, et al. Mesenchymal Stem Cell-Derived Secretome: A Potential Therapeutic Option for Autoimmune and Immune-Mediated Inflammatory Diseases. PubMed, 2022.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35892597/ - Madrigal M, et al. Mesenchymal Stromal Cell Secretome for the Treatment of Immune-Mediated Inflammatory Diseases: Latest Trends in Isolation, Content Optimization and Delivery Avenues. 2021.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8617629/
